
昔も日本文化に興味津々?日本の魅力満載のジャポニズムをご紹介

SNSもインターネットもなかった時代。
欧米諸国にとって、日本文化は東洋の魅惑に満ちた異文化として映っていました。
その上で、日本文化が西洋の芸術や生活に多大な影響を与えていたのはご存知でしたか?
今回は「ジャポニズム」と呼ばれる、日本文化が西洋に与えた影響について解説していきます。
「ジャポニズム」とは?
ジャポニズムとは、西洋で流行した日本文化・美術への熱狂的な関心のことです。
19世紀後半から20世紀初頭にかけて一大ムーブメントが起きました。
日本を表す「Japon」(ジャポン:フランス語)」と主義を表す「ism」を組み合わせたものが語源で、「日本趣味」とも訳されます。
主にジャポニズムは日本の芸術品から創作原理を深く吸収し、それを再度作品に落とし込むことだと言われています。
浮世絵、陶磁器、漆器などをはじめとした芸術品から得られた学びを、自分たちで改めて表現することに意義があると考えました。
一方で、関連する日本趣味・風俗的な流行は「ジャポネズリー」(Japonaiserie)と呼ばれることもあります。
ジャポネズリーは絵画や部屋の装飾に直接日本風の要素を取り込んでいることが特徴です。
加えて、日本の芸術品をコレクションすることも「ジャポネズリー」と定義されました。
同じ日本文化や芸術品でも、目的や活用方法の違いで言葉が異なる点は興味深いですね。
東洋(日本)のオリエンタルな文化は、西洋で暮らす人々に大きな影響を与えました。
現代でも「ジャポニズム」の項目が中学、高校美術の教科書や展覧会の開催などで取り上げられています。
生活に導入された「ジャポニズム」のジャンルをご紹介

では、どのような日本文化が「ジャポニズム」の要素となったのでしょうか?
ここでは題材となった日本文化をご紹介しましょう。
① 着物

絹でできた織物や、自然をモチーフにした独自の絵柄は多くの人に興味を与えました。
特に直線裁ちでできた独特の構造は、立体製法で作られる洋服との違いを浮き彫りにしたようです。
② 浮世絵

大胆な構図と線を活用した平面的な表現は、西洋絵画に大きな衝撃を与えました。
また、版画から生まれる鮮やかながらも軽やかな色使いも、油彩画を中心とした西洋絵画にはない表現方法だったと言われています。
とりわけ印象派の代表的な作家であるゴッホは、浮世絵に魅了された一人です。
彼は弟のテオと過ごしていた時に、浮世絵のコレクションを収集しました。
特に「葛飾北斎」が描いた浮世絵がお気に入りだったようです。
2025年に東京都美術館で開催された展覧会でも、彼の作品に加えて浮世絵のコレクションも展示されています。
実際の浮世絵とゴッホが描いた模写を見比べよう

葛飾北斎
江戸東京博物館 所蔵
※※東京富士美術館、中山道広重美術館、ブルックリン美術館にも所蔵あり
引用:Artvee
名所江戸百景の第52景である本作は、隅田川にかかる大はしを夕立の中渡る人々をモチーフに採用します。
雨を直線で表現する北斎の手法は、国内外問わず多くの人々に衝撃を与えました。

フィンセント・ファン・ゴッホ
ゴッホ美術館 所蔵
引用:Artvee
先ほどご紹介した『大はしあたけの夕立』をゴッホが油彩画で模写した作品です。
橋や行き交う人々が油彩画特有の立体的な表現で描かれている違いがあります。
また、よく見ると深緑色に囲まれた四角に、赤色で「吉原」「百景」などの漢字が書かれています。
全ての漢字を判読することは難しいものの、ゴッホの手によって漢字が書かれた点は非常に興味深い要素でしょう。
ちなみに筆者がジャポニズムおよび広重とゴッホの関係性を知ったのは中学生でした。
美術の教科書で初めて見た時に、同じ題材でも表現方法が異なる点に大きな衝撃を受けたことを鮮明に覚えています。
ゴッホがモチーフにした「浮世絵」

フィンセント・ファン・ゴッホ
ゴッホ美術館 所蔵
引用:Artvee
1820〜30年代に渓斎英泉が描いた『雲龍打掛(うんりゅううちかけ)の花魁』からインスピレーションを受けた作品です。
本作品は2017年に東京都美術館で開催された『ゴッホ展 巡りゆく日本の夢』でのポスターでも採用されました。
モチーフの花魁に加えて、背景に竹や鶴、蓮といった日本の要素が含まれているのも興味深いです。
日本は西洋画にも影響を受けていた
明治時代に日本も西洋から多くの生活様式を学び、その際に西洋画にも大きな学びと刺激を受けました。
かつて日本には存在しなかった以下の表現が、西洋絵画から学んだものだと考えられています。
【西洋画から学んだ表現】
- 輪郭線を使わない
- 線ではなく「面」を意識した立体的な描写
- 油彩画特有の重厚な筆致
③ 陶磁器

1867年にパリで開催された万国博覧会では、日本の陶磁器が多く展示されました。
特に、以下の陶磁器が西洋に大きな衝撃を与えたと言われています。
- 薩摩焼
細密な金欄手(きんらんて)が人気を博しました。
「京薩摩」と「大阪薩摩」の2種がありますが、生産地や陶磁器の雰囲気に違いがあります。
絢爛豪華で絵画的な雰囲気が「京薩摩」、商用的ながらも洗練された雰囲気が「大阪薩摩」の特徴です。 - 有田焼、九谷焼
鮮やかな赤絵や色絵が多くの人々の心を掴みました。
赤絵の伝統技法や図案は、西洋美術に影響を与えたと言われています。 - 神戸絵付
薩摩焼や九谷焼を模した精巧な磁器です。
神戸港(兵庫県)から輸出されたため、「神戸絵付」と名付けられました。
加えて、明治期に「殖産興業」として陶磁器の輸出に力を入れていきます。
そのため、日本の陶磁器が西洋の人々の手に取られる機会が多くなりました。
なぜ「ジャポニズム」が流行したのか

ジャポニズムが広まったきっかけは、幕末期から明治時代における日本の歴史と密接に関わります。
とりわけ、重要なキーワードになるのが「開国」です。
江戸時代に国交が制限されていた時があった
実は江戸時代の日本は、一時期「鎖国」と称して独自の外交政策を行なっていました。
その主な目的は2つ。
初めは「キリスト教の布教防止」です。
キリスト教の布教防止は江戸幕府の治世を盤石にしたいという思惑もありました。
もう1つは「カトリック国家による侵略・植民地化の排除」です。
当時宣教師の入国からカトリック国家が侵略してくると考えられていました。
そのため、鎖国で出入国を制限する必要があったと当時の幕府は考えたようです。
鎖国が行われていた時代に交流があった海外の国は限られていました。
具体的には、中国(明、清)と朝鮮、オランダの3カ国のみです。
ただし、完全に諸外国との関係を絶たれていたわけではありません。
あくまでも「幕府による外交と貿易の管理・制限」という立ち位置で導入されました。
転機となった「黒船来航」
鎖国政策を行っていた最中、1825年にアメリカ人のペリーが日本に突然訪れます。
黒船という大きな外国船が来航し、大きな混乱が起こりました。
ペリーが日本に来航した目的の1つに、「日本を貿易、補給の拠点にしたい」という考えがありました。
圧倒的かつ近代的な武力をもって日本に開国を強く要求し、幕府は天皇の許可なくこれを承認してしまうのでした。
「開国」に伴い、日本の美術工芸品が西洋に輸出された
開国によって日本の美術工芸品が多く海へと渡ります。
かつて「ジパング」として日本文化は神秘的な印象を持たれていました。
それが輸出によって、西洋に暮らす人々の目に留まるようになったのです。
さらに、1867年のパリ万博への出展を江戸幕府が決めたことで、ジャポニズムが確立するきっかけとなります。
偶然にも、ジャポニズムが確立した時期の日本は江戸から明治へと歴史が移りかわる時でした。欧米諸国に並ぶよう「西洋化」と「殖産興業」に力を入れていくのです。
まるでお互いがそれぞれの文化を学び合うような構図になっていると筆者は感じます。
現代から見る「ジャポニズム」

2026年現在、日本は観光地として世界中から多くの注目を集めています。
日本を訪れる外国人の皆さんは、どのような日本文化に興味を持っているのでしょうか。
詳しく見ていきましょう。
- 日本の四季
桜や紅葉をはじめとした風景に加えて、お花見などの自然をモチーフにした文化も人気です。 - アニメ、漫画
様々なジャンルをモチーフにした作品は、世界中で大ヒット。
お土産としてフィギュアやキャラクターグッズを購入する方も多いようです。 - 体験型文化
着物の着付けや茶道など、日本文化を肌身で体験したいという声が挙げられました。
また、「忍者体験」といった独自のプログラムも大人気なんだとか。 - お菓子、化粧品
日本のお菓子や化粧品は味や品質が良いと大人気。
来日したら自分用またはお土産として大量に購入する「爆買い」をする海外の方も多いです。
ここに挙げた文化は、いわば「現代版ジャポニズム」と言い換えることができるでしょう。
まとめ:
ジャポニズムは西洋からみた日本の憧れが詰まっていた

いかがだったでしょうか。
ジャポニズムは日本文化が広まったきっかけ以上の役割を果たしました。
それは日本の歴史の転換点にも重なっていたことから伺えます。
さらに、ジャポニズムが流行した同時期は、日本も文明開化で西洋の文化を数多く学んでいた時期でもありました。
同時期にお互いの文化を吸収し、良いポイントを取り入れていたところは非常に興味深いですね。
現代でも、世界中で「異文化・相互理解」の重要性が問われています。
今回のジャポニズムの記事が、日本文化や相互理解の手助けとなればとても嬉しいです。
【アイキャッチ画像引用】
『 江戸名所百人美女』歌川国貞 (三代歌川豊国) [画] | Artvee

















