
日本由来の動物とことわざ12選|狐・たぬき・鶴の意味と由来を解説

日本には古くからの信仰や暮らしと結びつき、独自の文化を育んできた動物が多く存在しています。
彼らは長い歴史の中で、豊かな自然と人々と一緒に過ごしてきました。
また、動物の特性を用いた例えやことわざも多く日本語に残っているのも見逃せません。
この記事では日本固有・由来の動物の特徴と、動物を用いたことわざについてご紹介します。
日本固有・由来の動物

豊かな四季と美しい自然が広がる日本では、固有の動物が誕生しました。
ここでは代表的な7種類の動物と、その背景にあるエピソードをご紹介します。
狐 (きつね)

狐は、稲荷信仰における「神の使い」として、日本人に古くから親しまれてきた動物です。
全国に約3万社あるといわれる稲荷神社では、狐の像がおなじみの光景となっています。
また、稲荷信仰が広まる以前は、山の狼を神の使いとする信仰がありました。
稲作の広がりとともに、里に暮らす狐へと役割が移っていったとする見方もあります。
さらに、狐は日本の色名としても有名です。
赤みを帯びた薄い茶色と褐色を混ぜた色は、狐の毛色が由来となっています。
この色は「狐色」として、焼き菓子や料理がこんがりと焼けた様子を例える色として広まりました。
たぬき

たぬきは、人を化かす動物として昔話に数多く登場し、江戸時代以降はユーモラスな置物としても親しまれるようになりました。
群馬県の茂林寺には、和尚に化けたたぬきが恩返しをする「分福茶釜」(ぶんぶくちゃがま)の伝説が伝わっています。
さらに、信楽焼のたぬきの置物では、笠と徳利を持つ「酒買い小僧」スタイルが有名です。
この格好が定着したのは、江戸時代後期から明治時代にかけてだといわれています。
比べられがちな「狐」と「たぬき」
日本の伝承では、何かと狐とたぬきが比べられがちです。
ここでは具体的なエピソードを2点ご紹介しましょう。
人間を化かす「変化の術」を競い合う
狐とたぬきはそれぞれ「人間を驚かす変化の術がある」と古来から考えられてきました。
理由の1つは生物としての特性です。
薄暗い夕方や夜に見られる姿に、人間が驚いたことがきっかけだといわれています。
他にも昔話や仏教の伝承、自然現象が狐とたぬきの力だと考えられてきました。
また、この特性が由来となった「狐とたぬきの化かし合い」ということわざがあります。
これは「ずる賢い者同士が互いを騙すために探り合っている」状態を表しています。
うどん・そばの名称でもつけられている

和食の定番メニューである「うどん」や「そば」にも、狐とたぬきの名前がつけられています。
2つの名前の違いは「使われている具材」です。
- 狐うどん(そば):
おあげ(油揚げ)がトッピングされている。
稲荷神がおあげが好きという伝承が由来。 - たぬきうどん(そば):
天ぷらの衣から生まれた「天かす」(揚げ玉)がトッピングされている。
天ぷらの具材がない「タネ抜き」がたぬきに転じた説が有名。
上記は一例ですが、地域によって具材が異なる場合があります。
日本犬

世界各地に存在している犬にも、「日本犬」と呼ばれる日本固有の犬種がいます。
特に代表的な犬種は、柴犬や秋田犬です。
以下6つの日本犬は、国の天然記念物にも指定されています。
- 柴犬
- 秋田犬
- 紀州犬
- 甲斐犬
- 北海道犬
- 四国犬
特に秋田犬は、「忠犬ハチ公」のモデル犬種として有名です。
また、1937年には来日中のヘレン・ケラーに贈られ、アメリカへ渡ったという記録も残っています。

撮影・待ち合わせのスポットとして連日多くの人々で賑わっている。
三毛猫 (みけねこ)

白、茶色、黒の毛色が愛らしい「三毛猫」は、日本で古くから縁起の良い猫として親しまれてきました。
実は、三毛猫はほぼ全員メスしか生まれないのはご存知でしたか?
この毛色と性別の仕組みは、長年の謎でした。
その謎は2025年に、九州大学や東京大学などの研究グループによって解明されています。
まず、三毛猫やサビ猫がほぼメスに限られるのはオレンジ色と黒色を決める遺伝子がX染色体上にあるためです。
メス(XX)は2本のX染色体を持つため両方の色が混ざります。
一方で、オス(XY)はX染色体が1本しかないため、通常は三毛猫になりません。
研究グループはこの毛色を決める遺伝子の正体が「ARHGAP36」であることを突き止めました。
ごくまれに生まれるオスの三毛猫は、染色体の異常によるものです。
そのため、多くは生殖能力を持たないことも分かっています。
兎 (うさぎ)

兎は日本神話や十五夜の伝承を通じて、古くから日本人にとって身近な存在であり続けてきました。
『古事記』に記された「因幡の白兎」では、和邇(ワニザメ)を欺いて皮を剥がれた兎が、大国主命に助けられています。
また、月の模様を兎が餅つきをする姿に見立てる「月の兎」の伝承でも有名です。
この発想は仏教説話に由来するとされ、中国やインドなど東アジアに広く共通しています。
そのため、この伝承は日本独自というより「大陸から伝わった文化が根づいたもの」と考えられています。
固有種としては本州・四国・九州地方に生息する「ニホンノウサギ」と、奄美大島および徳之島だけに生息する「アマミノクロウサギ」の2種類がいます。
特に「アマミノクロウサギ」は、国の特別天然記念物として指定されています。
タンチョウ

タンチョウは頭のてっぺんが赤い羽のない皮膚で覆われている、日本最大級の大型の鳥類です。
鶴の仲間で、「丹頂鶴」(たんちょうづる)とも呼ばれます。
長寿と縁起の象徴として、家紋や祝いの意匠に古くから使われてきました。
健康長寿を表す「鶴は千年、亀は万年」の言葉における「鶴」は、タンチョウを指すといわれています。
タンチョウは明治期の乱獲により、一度は絶滅したと考えられていました。
しかし、1924年に釧路湿原で数十羽が再発見され、その後の保護活動により2024年度の調査では1,927羽まで回復しています。
2026年には環境省のレッドリストから35年ぶりに「絶滅危惧種」の分類が外れました。
現在では北海道東部と大陸の一部にのみ生息し、国の特別天然記念物に指定されています。
鹿

鹿は日本各地に生息していますが、とりわけ奈良公園周辺が有名なスポットです。
奈良公園の鹿は、春日大社の「神鹿」(しんろく)として保護されてきた歴史を持ちます。
日本各地に暮らす「ニホンジカ」とは異なる独自の遺伝子を持つといわれており、1957年に国の天然記念物に指定されました。
奈良公園と鹿の関係性については
こちらの記事で詳しく解説しています。
あわせてご覧ください。
動物を用いたことわざや例え

日本語には、動物の姿や習性から生まれたことわざや慣用句が数多くあります。
それぞれの由来を知ると、日常の言葉がより味わい深く感じられます。
① 狐
- 狐につままれる
狐に化かされたように、わけが分からずぼんやりすること。
狐が人を化かす存在とされてきた民間信仰に由来する表現です。 - 狐の嫁入り
天気が良いのに雨が降る「天気雨」を指す言葉です。
夜に山中で狐の嫁入り行列のような灯りが連なって見えたという言い伝えが元になっているといわれています。 - 虎の威を借る狐
力のない者が、強い者の権威を借りていばること。
中国の故事『戦国策』が由来とされ、日本でも古くから使われてきました。
② たぬき
- たぬき寝入り
都合が悪いときに、寝たふりでその場をやり過ごすこと。
たぬきが驚くと気絶したように動かなくなる習性が由来とされています。 - 取らぬ狸の皮算用まだ手に入っていないものを当てにして、あれこれ計画を立てること。
狸を捕まえる前から、その皮を売った利益を計算する様子から生まれました。
③ 犬
- 犬も歩けば棒に当たる
行動を起こせば、思わぬ幸運や災難に出会うこと。
もとは「出歩くと災難に遭いやすい」という戒めでした。
しかし、現在では良い意味で使われることが多くなっています。 - 犬猿の仲
非常に仲が悪い関係を指す言葉です。犬と猿は動物としても相性が悪いとされてきたことに由来します。
また、「十二支」の伝承でも、犬と猿が隣り合わないように酉(鳥)が入ったという伝承もあります。
④ 猫
- 猫の手も借りたい
誰でもいいから手伝ってほしいほど忙しい様子。
「あまり働き者ではない猫にさえ頼りたい」という例えから生まれました。 - 借りてきた猫のようにおとなしい
普段とは違い、非常におとなしくしている状態のこと。
猫は自分の縄張り以外では、警戒しておとなしくなる猫の習性が由来です。 - 猫に小判
価値の分からない者に貴重なものを与えても無駄であること。
似た意味の言葉としては「豚に真珠」があります。
⑤ その他の動物
- 猿も木から落ちる
その道の名人でも、時には失敗することがあるということ。 - 二兎追うものは一兎も得ず
同時に二つのことを狙うと、どちらも失敗しやすいという教え。
西洋のことわざが由来ともいわれています。 - 卵が先か鶏が先か
原因と結果が繰り返される事柄について、どちらが先か決められない状況のたとえです。 - 立つ鳥跡を濁さず
立ち去る者は、後始末をきちんとしてから去るべきだという教え。
水鳥が飛び立った後の水面を汚さないことに由来します。 - 鶴の一声
多くの人の議論よりも、権威ある人の一言で物事が決まること。
数ある鳥の中でも鶴の鳴き声が特に高く通ることに由来するといわれています。 - 能ある鷹は爪を隠す
実力のある者ほど、それをひけらかさないという教訓。
まとめ:
日常生活で親しまれている動物を用いた比喩は、日本人の鋭い観察眼をよく表している。

日本固有の動物の特徴と、動物を用いたことわざをご紹介してきました。
様々な動物の特徴を使ったことわざや例えは、現代の私たちでも通じる教えが多く込められています。
特にそれぞれの動物と教訓を合わせたことわざは、日本人の鋭い観察眼が現れていると筆者は考えます。
もし初めて聞く動物を用いたことわざや例えがあれば、動物の特性をヒントに意味を手繰り寄せていただければ幸いです。















