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日本の伝統的な暑さ対策|食・衣服・暮らしの知恵から現代のクーリングシェルターまで

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日本のほとんどは温暖湿潤気候と呼ばれ、昔から蒸し暑い夏を様々な工夫で共存して来ました。
エアコンのなかった時代から、人々は食べ物・衣服・暮らしの知恵を組み合わせて、涼を得てきたのです。

この記事では、古来から培われた日本の伝統的な暑さ対策と、現代ならではの新しい対策をあわせてご紹介します。

① 食文化:食感と味で涼を感じる

夏を乗り切るための食文化には、旬の食材を生かした先人の知恵が詰まっています。
ここでは代表的な3つをご紹介します。

夏野菜

トマト・きゅうり・とうもろこしなどの夏野菜は、水分やカリウムを多く含んでいるのが特徴です。
カリウムが持つ利尿作用によって、体の熱を尿と一緒に排出すると考えられてきました。

東洋医学(漢方)では、夏野菜は「涼性」「寒性」に分類されます。
この特性を持つ食材は、体にこもった熱を取り除くと考えられてきました。
特にきゅうりやトマトは体を潤し、暑さによる渇きを癒す食材として扱われています。

ただし、現代の栄養学の観点からは「夏野菜が体を冷やす」とは言い難いという指摘もあります。

とはいえ、夏野菜の多くは9割以上が水分で、冷やしてそのまま食べられる手軽さが魅力です。
そのため、暑い時期に体を冷やす食べ物として活躍したことに変わりがないと筆者は考えます。

そうめん

そうめんは小麦粉と食塩、水でできた日本製の乾麺です。
奈良時代に中国から伝わった「索餅」(さくべい)がルーツとされています。
平安時代には1年の健康を願って、七夕にそうめんを食べる文化が生まれました。 

麺の色は白色が代表的ですが、メーカーによっては天然色素で色を染めたものも販売されています。
冷えたつゆにそうめんを入れて食べると、口いっぱいに涼しさを感じられます。
喉ごしが良いため、夏の暑さで食欲がない日でも美味しく食べられるのが嬉しいポイントですね。

また、そうめんを使った夏の風物詩として有名なのは「流しそうめん」が挙げられます。流しそうめんは、竹でできた筒に水とそうめんを流し、箸ですくって食べる遊びです。
この遊びは、1955年(昭和30年)に宮崎県高千穂町に駐在していた新聞記者が発案したといわれています。

竹とわき水を使って涼をとったことがきっかけでしたが、最終的に70年の時間をかけて夏の風物詩として全国に広まりました。

かき氷

かき氷とは、削った氷の上にシロップをかけた伝統的なスイーツです。
その歴史はとても古く、登場は平安時代の『枕草子』にまでさかのぼります。

作者の清少納言は、金属の器に削った氷に甘葛(あまづら)というシロップをかけたものを「あてなるもの」(上品なもの)として紹介しました。
当時、氷は冬に作られたものを氷室(ひむろ)で保存する貴重品でした。
そのため、かき氷は貴族しか味わえない特別なごちそうだったといわれています。

かき氷の詳しい歴史や現代の楽しみ方については、
こちらの記事で詳しく解説しています。
あわせてご覧ください。

② 衣服

夏を快適に過ごすための衣服にも、素材や仕立てにさまざまな工夫が凝らされてきました。

浴衣 (ゆかた)

浴衣はもともと、平安貴族が蒸し風呂に入る際に着た「湯帷子」(ゆかたびら)が起源とされます。
素材は麻から綿へと変わり、江戸時代には庶民の間で銭湯帰りの普段着として定着しました。

浴衣には、夏を快適に過ごすための工夫も込められています。
白地の浴衣は昼用とされ、家の中で着ると真夏でも涼しく感じられます。

一方、紺地は藍の香りを虫が嫌うことから、夕方以降に着るのが良いとされてきました。
江戸後期には「注染」(ちゅうせん)という染色技法が生まれます。
この染色技法により色柄が豊かになったことで、庶民の間にも浴衣が一気に広まっていきました。

現代では夏祭りや花火大会で多く着用される着物となっています。
また、着付けがしやすいようにワンピースタイプやスカートタイプの工夫がされている浴衣も登場しました。
これらの浴衣は家庭で洗濯できる手軽さも魅力です。

甚平 (じんべい)

甚平は上衣(トップス)とハーフパンツ状の下衣(ボトムス)に分かれているタイプの和服です。
トップスの形は、浴衣や着物と似た構造をしています。

甚平は江戸時代に下級武士が着た袖なし羽織「甚兵衛羽織」(じんべえばおり)が語源とされています。
庶民の間では、木綿や麻を使った上下セパレートの軽装として親しまれました。

現代では、主に男性用として夏祭りや花火大会でのカジュアルな装いとして愛用されています。

その他衣服で使われていた工夫

厚手の素材が多い着物にも、涼しさを出すために夏専用の織り方が生まれました。
代表的な織物は、「絽」(ろ)や「紗」(しゃ)と呼ばれる薄手の織物が挙げられます。

これらの織物は生地の目をあえて粗く織ることで通気性を高めた「からみ織」という技法で作られています。
特に江戸時代に生まれたとされる絽は、透け感がありながらも夏の正装として使えるのが特徴です。

また麻の着物は縄文時代から使われてきた歴史があります。
麻素材の衣服は糸自体に張りがあるため生地が肌に張りつかず、歩くたびに風が通り抜けて熱気を逃がす仕組みになっています。

素材や織り方の工夫によって、着心地と涼しさを両立させていたのですね。

③ 住まいと暮らし

住まいまわりにも、涼を呼び込むための知恵が息づいています。

打ち水

打ち水は、地面に水をまいて涼を得る昔ながらの方法です。

水が蒸発するときに周囲の熱を奪う「気化熱」の仕組みを利用しており、江戸時代から日常的に行われてきました。
環境省の資料によると、打ち水を行うと気温そのものは下がらなくても体感温度は約1.5℃下がるとされています。 

打ち水を効果的に行うコツは「時間帯」です。
日差しの強い昼間は水がすぐに蒸発してしまうため、涼しさをあまり感じられません。
そのため、日差しが和らぐ朝や夕方の時間帯に試してみましょう。
この時間帯なら水がすぐに蒸発せず地面にとどまるため、打ち水の冷却効果をより一層実感できます。

風鈴

風鈴とは、夏の軒先に飾る小型の鐘鈴です。
ガラスや陶器でできており、風に揺れると可憐な音色を楽しめます。

風鈴のルーツは、古代中国で吉凶を占うために使われた「占風鐸」(せんふうたく)だとされています。
日本に伝わった当初は魔除けの道具で、平安・鎌倉時代の貴族は災いを防ぐために自宅に風鈴を吊るしていたという記録が残っています。

江戸時代になると涼を楽しむ道具として庶民に広まり、風鈴を鳴らしながら売り歩く「風鈴蕎麦」も流行しました。

現代でも風鈴を主役にしたイベントは各地にあります。

たとえば埼玉県川越市の川越氷川神社では、夏の期間中に約2,000個の江戸風鈴が境内を彩る「縁むすび風鈴」が開催されます。
このイベントでは、夕方からのライトアップも人気です。

氷川神社の風鈴。
日程は年によって変わるため、訪れる際は公式サイトでの確認をおすすめします。

素材や道具で涼を取る工夫

打ち水や風鈴以外でも、素材や道具を活用しながら涼を取る工夫づくりが行われてきました。

例えば窓の外や軒先に吊るす「すだれ」は、日よけや目隠しとして使われてきました。
すだれは奈良時代の『万葉集』にすでに登場するほど古い歴史を持つ家財だといわれています。
江戸時代には庶民の家にも広まり、天然素材ならではの通気性と香りで涼しい空間をつくっていました。

また、うちわや扇子も手であおいで風を起こす身近な道具です。
江戸時代には竹骨に紙を張った絵うちわが普及し、夕涼みの必需品として親しまれました。

就寝時には、蚊帳(かや)と呼ばれるメッシュ状の寝具を布団や部屋の周りに設置していました。
蚊帳は目の粗い生地で作られているため、虫の侵入を防ぎつつ外からの風を通す効果を持っています。江戸時代に近江商人の組織づくりによって手に入りやすくなり、庶民の暮らしにも徐々に広まっていきました。

現代の酷暑で導入された「暑さ対策」

近年世界的に記録的な暑さが続いていますが、日本も例外ではありません。
2026年には40度を超える気温の日は「酷暑」(こくしょ)と呼ぶ用語が生まれました。
猛暑による健康被害を防ぐため、行政や企業も新しい暑さ対策を次々と打ち出しています。

クーリングシェルター

クーリングシェルターとは、市町村が指定できるようになった冷房の効いた避難施設です。
ここでは誰でも無料で涼むことができます。
また、施設によっては飲み物や塩飴が配布されることもあります。
2024年4月の気候変動適応法の改正より設置されました。

熱中症のリスクが高まる恐れがあると「熱中症特別警戒情報」が発表されます。
その際に、公共施設や商業施設などがクーリングシェルターとして一般に開放されます。

令和8年8月時点では、1,259市区町村がクーリングシェルターを指定・導入しています。

「ひんやりグッズ」の開発・販売

各メーカーからは、暑さをしのぐためのグッズが次々と登場しています。
片手で持ち歩けるハンディファン、首にかけるタイプの保冷剤など、種類は年々増えています。

特に筆者が今年の夏に活用したのは、香り付きの冷却スプレーです。
暑い中このスプレーをかけた瞬間に、冷たい感覚が肌に広がりました。
制汗剤としての役割を果たしていたのも嬉しいポイントです。

これらのグッズはドラッグストアや100円ショップを中心に販売されています。
日本に来た際は、お気に入りのひんやりグッズを探してみるのも楽しいかもしれません。

まとめ:
日本の暑さ対策は、五感と伝統、先人たちの工夫を組み合わせた知恵が活かされている

日本の暑さ対策は、食べ物・衣服・暮らしの知恵が組み合わさって発展してきました。

夏野菜やそうめん、浴衣、打ち水、風鈴など、どれも先人たちが試行錯誤しながら見つけた工夫です。
そこに近年は、クーリングシェルターやひんやりグッズといった新しい対策も加わりました。

日本も世界と同じく、暑さが年々厳しくなっています。
しかし、暑さを乗り切るために伝統と現代の知恵を組み合わせて夏を乗り切る工夫が日々行われています。

ぜひご自身の暮らしにも、昔ながらの涼と最新のグッズを取り入れてみてください。

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