
4月に学校が始まるのはなぜ?その謎と歴史を紐解いてみよう

日本で「4月のイメージ」と聞かれると、多くの人は「入学や入園」「進級」「就職」をイメージするのではないでしょうか。
毎年4月には新しい学校への入学や学年への進級、就職を迎える人たちがいます。
新しい環境に飛び込む人が多いこの時期は、春の陽気と相まって期待と不安がつきものでしょう。
一方で、多くの国では毎年9月に入学・進級があります。
4月始まりであるのは、日本やインドなど限られた国であるようです。
なぜ、日本の学校では入学・進級が4月始まりになったのか。
この記事では、その謎を歴史や文化と一緒に紐解いていきます。
なぜ日本は4月に始まるようになったのか?

まず、日本では毎年4月に新年度が始まることが理由として挙げられます。
新年度とは?
新年度とは、年度が切り替わり新しい年度が始まることを指します。
日本では、原則「毎年4月」が年度始まりとされています。
年度が切り替わるこの時期には、先ほどお伝えした学校への入学や幼稚園・保育園の入園、新社会人の就職のイベントがあります。
また、官公庁では新しい制度の導入や人事異動、予算の切り替わりが発生します。
新年度が始まる毎年4月は、暮らしの面でも以下の出来事が起こる時期でもあります。
- 定期券の購入
毎年4月上旬〜中旬は学生や社会人が通学・通勤定期券を購入する時期です。
この時期は電車の切符売り場が混み合うため、旅行を予定している方は時間に余裕を持って行動しましょう。 - 雑誌、新聞記事の連載刷新
一部の雑誌や新聞では、この時期に連載内容が切り替わることが多いようです。 - 法改正の施行
日本の政治で決定された法改正が、この時期に施行されることが多いです。
例えば2026年だと、「マイナンバーカードと免許証の一体化」や交通ルールを取り扱う「道路交通法」の改正が当てはまります。
「年」とは違うもの?
よく2026年、令和8年というように「年」という区切りが日本の暦であります。
この「年」と「年度」の違いは何か。
詳しく見てみましょう。
① 年
暦(太陽暦)通りの区切り。
カレンダー通りの1年間を指すもの。
例) 2026年→2026年1月1日〜2026年3月31日
② 年度
ある組織において、それぞれの目的に応じて決められた1年間を指す。
代表的なものとしては以下のものが挙げられる。
- 学校年度
日本の学校(小中学校、高等学校、大学など)で定められている年度。
1学年の区切りとして使われる。 - 会計年度
国や官公庁などで定められた年度。
事前に決めた予算を、この1年間の中でやりくりする。 - 企業年度
会社の経営において定めた年度。
企業によって独自に定めているが、大抵は4月始まりまたは1月始まりが多い。
この項目で挙げた「学校年度」「会計年度」は毎年4月1日が年度始めとされています。
そのため、同じ年でも1月1日から3月31日までの取り扱いには注意が必要です。
| 2026年1月1日から3月31日 | 2025(令和7)年度 |
|---|---|
| 2026年4月1日から12月31日 | 2026(令和8)年度 |
| 2027年1月1日から3月31日 |
4月からの年度始まりと近代史の関係性

では、なぜ日本では毎年4月が年度始まりとなったのでしょうか?
そこには日本の近代史との関わりが大きく影響していました。
明治時代と日本の西洋化

江戸時代から明治時代に切り替わる際、日本では文化・政治ともに大きな変化が起こりました。
その1つが「西洋の文化を多く取り入れること」です。
後に「文明開化」と呼ばれるこの風潮は、日本の暮らしを急速に近代化へと推し進めていきました。
明治時代に急速に西洋化を推し進めた背景には、「欧米諸国と並び立つこと」が挙げられます。
ペリーの黒船来航をきっかけに西洋諸国の力を知った人々は、国力をつけ欧米諸国と対等に渡り合う重要性を強く感じたのです。
加えて、当時結んだ不平等条約を改正させるには、日本も「文明国である」ことを示す必要がありました。
これらの事情から、西洋の文化を取り入れ近代化させる必要があったのです。
当初の年度始まりは「10月」だった
近代化を推し進める際、会計年度を当初10月に設定していた時期がありました。
しかし、当時の国民の暮らしとずれが起こるようになっていきます。
その理由の1つとして、「地租改正」(ちそかいせい)と呼ばれる改革が挙げられます。
地租改正とは

明治政府が行った土地、財政改革です。
江戸時代までお米で納めていた税金(年貢)を、地価に応じた現金の納付に変更しました。
当時現金でなくお米を納めていた理由は、お米は腐らずに貯蔵・分割ができたためです。
そのため、食物ながら事実上の通貨としての役割を果たしていたと考えられています。
一方で、明治時代に代わり国が近代化を推し進める際、多くの現金が必要となりました。
そこで、近代化にかかる費用を税金として、国民に現金を納めてもらうよう制定したのです。
10月だと現金納付が間に合わない?
しかし、10月が年度始まりだとお米の収穫と重なり、現金の納付が間に合いません。
納付が後ろ倒しになると、年度予算を決定し運用するのにも時間がかかってしまいます。
そこで、お米を現金に変えて余裕を持たせられるよう、明治政府は会計年度を4月に変更しました。
お米を現金に変え納付に余裕を持たせることで、安定した税収と予算の設定ができるように設定します。
これが現在まで続く、4月の年度始まりのきっかけとなったのです。
会計年度が4月始まりに移行したのと連動し、学校の年度始まりも4月となりました。
ちなみに年度は一時期を7月始まりで運用していた時期もありましたが、同時期に軍事費がかさみ財政赤字となったようです。
この出来事から、予算の調整期間を持たせる意味でも4月始まりが適していたとも言われています。
他にも色々。学校が4月始まりとなった理由
なお、学校が4月始まりとなったのは他にも以下の事情があったと言われています。
- 士官学校との連動
当時の士官学校は4月入学であり、学校もそれに合わせた。
先行して士官学校が4月入学になったのは、徴兵令により徴兵対象者の届出が4月1日に定められたため。
また、優秀な学生を士官学校に取られないよう、学校も4月1日入学に合わせた説もある。 - 農業の手伝いとの関わり
1947年に現行の義務教育期間が制定された際、当時の子供達は農業を手伝うことが多かった。
この手伝いで多くの子供達が欠席することもあり、学業に差し障りがないよう4月始まりとなった。 - イギリスの手法を参考にした
当時経済大国として知られていた、イギリスの会計年度が4月始まりだった。
それにならって明治政府が4月始まりにしたとも言われている。
年度と学校生活におけるトリビア2点

ここで、日本の年度と学校生活におけるトリビアを2点ご紹介しましょう。
① 「早生まれ」と「遅生まれ」の違い
先ほど解説した通り、日本の学校では「4月1日」の新年度を区切りに学年が切り替わります。
そのため、同じ学年の中に前年に生まれた子と新年に生まれた子が混ざることになります。
今回は2026(令和8)年度に小学校へ入学する子たちを例に、その仕組みを見てみましょう。
学年の区切り(2026年度入学の場合)
1つの学年は、「4月2日〜翌年4月1日」に生まれた子たちで構成されます。
| 区分 | 生年月日 | 通称 |
|---|---|---|
| グループ① | 2019年4月2日 〜 2019年12月31日 | 遅生まれ |
| グループ② | 2020年1月1日 〜 2020年4月1日 | 早生まれ |
グループ①の期間に生まれた子たちを「遅生まれ」とし、反対にグループ②の子たちは「早生まれ」と呼ばれています。
なぜ誕生日が遅いのに「早生まれ」と呼ぶの?
本来「早生まれ」の子たちは学年の中では誕生日が遅いはずです。
それにもかかわらずなぜ生まれが「早い」と表現されるのでしょうか?
これには、昔の年齢の数え方である「数え年」が深く関係しています。
数え年とは?
誕生日に関わらず、「1月1日(元日)」が来たら全員一斉に1歳年を取るという考え方です。
かつての日本では、誕生日による満年齢でなく、数え年が採用されていました。
理由①:1歳年を取るのが「早い」から
1月〜4月1日に生まれた子は、誕生日が来る前の「1月1日」に、みんなより一足早く(数え年で)年齢が上がります。
この「誕生日より早く年を取る」という感覚から「早生まれ」と呼ばれるようになりました。
理由②:同じ年に生まれた子より「早く」入学するから
ここが一番のポイントです。同じ「2020年」に生まれた子たちで比較してみましょう。
- 2020年1月〜4月1日生まれ (早生まれ)
→ 2026年度に小学校へ入学 - 2020年4月2日〜12月末生まれ (遅生まれ)
→ 2027年度に小学校へ入学
数え年の観点から見ると、同じ「2020年」に生まれた子は学年が同じになるはずですよね。
しかし、1月〜4月1日に生まれた子たちは1年早く小学校に入学するルールとなっています。
つまり、「同じ年に生まれた仲間(2020年生まれ)よりも1年早く学校に入る」ため、早生まれと呼ばれているのです。
改めて、早生まれと遅生まれの違いについてまとめてみましょう。
| 遅生まれ | 早生まれ | |
|---|---|---|
| 生年月日 | 4月2日〜 12月31日 | 翌年1月1日〜 4月1日 |
| 学年の中での誕生日 | 迎えるのが早い | 迎えるのが遅い |
| 入学時期 | 年相応 | 同じ年(西暦)に生まれた子よりも 1年早く入学する |
「学年」という枠組みで見ると少しややこしく、時折日本人でも間違えることがあります。
そのため、早生まれは「生まれた年(西暦)」という枠組みから見て、1年早く進級するから「早生まれ」だと覚えるとスムーズでしょう。
② 学年で一番早い誕生日は「4月2日」

今まで日本の年度始まりは「4月1日」だとお伝えしました。
一方で、学年で一番早い誕生日は「4月2日」と法律で設定されています。
なぜ1日のずれが起こっているのか、とても不思議ですよね。
この理由は1947年に制定された「学校教育法」のルールが挙げられます。
「学校教育法」における独自の年齢設定
学校教育法の中に「年齢計算ニ関スル法律」という項目があります。
その項目を読み解いていくと、「誕生日を迎える前日の終了時(深夜12時)」に小学校に入学する満年齢に達したとみなすようです。
例えば、5月18日生まれの人であれば以下のように満年齢に達すると考えられます。
| 実際の誕生日 | 学校教育法における誕生日 |
|---|---|
| 5月18日 午前0時 | 5月17日 深夜24時 |
当日0時と前日の24時は同じ時間帯ではあります。
その上で、学校教育法では「前日24時」を採用しているのが特徴です。
このルールに則りながら、改めて4月1日生まれと4月2日生まれの誕生日を見てみましょう。
| 実際の誕生日 | 学校教育法における誕生日 |
|---|---|
| 4月1日 午前0時 | 3月31日 深夜24時 |
| 4月2日 午前0時 | 4月1日 深夜24時 |
つまり、4月1日生まれは「3月31日」に小学校に入学できる満年齢に達したと見なされるのです。
そのため、学年は1学年早く、かつ早生まれのグループに入ることになります。
実際の誕生日の日付は年度始まりであるので、この点は混乱しやすい要素だといえるでしょう。
ちなみに2026年現在、日本には「飛び級制度」は存在しません。
そのため義務教育にあたる小中学校では、ほぼ全員が同い年の学年で構成されている場合が多いでしょう。
※高等学校や大学、専門学校では状況が異なる場合があります。
まとめ:
日本の学校が4月に始まるのは、歴史や法律と深い関わりがあった

いかがだったでしょうか。
4月に学校が始まる文化は、明治時代における近代化や法律の関係が大きく関わっていたといえるでしょう。
さらに、年度始まりから生まれた細かい仕組みやルールも、現代まで続く学校の仕組みにも影響しています。
私たち日本人でも詳しく知らない内容ではありましたが、先人たちが作った制度が今でも受け継がれていることに感銘を受けました。
これらの制度は明治時代に海外から学んだ手法が使われているため、この点でも世界とのつながりが残っているのは興味深いですね。
現在の日本の暮らしは、明治時代以降の暮らしの変化が続いている要素が多々あります。
「古都 KOTO」ではこの他にも近代化や歴史についてもご紹介していきます。
他に気になる記事があったら、ぜひ一緒にご覧いただけると嬉しいです!















