
これからの時期は訪れてみたい。銭湯の魅力をお伝えします
季節が秋に進んでいるとはいえ、まだまだ暑い日が続く日本です。
あまりの気温の高さにシャワーで入浴を済ます日々が多かったのですが、先日久しぶりに湯船に浸かりました。
理由は近所のスーパーで入浴剤が半額になっており、しかもバカンス気分を味わえると銘打ってあるものだったからです。
よく「健康や美容のためにも一年中湯船に浸かるように」と言われ、半信半疑だったものの翌日の心身の調子は明らかに好調でした。
身体の芯から温まるので、クーラーや冷たい飲み物で知らぬ間に培った「冷え」を取ってくれたのかもしれません。
さらに大きい湯船でじっくり身体を温めたいと考えていたところ、「銭湯」に行くことを思いつきました。
ここでは、「銭湯」の魅力や歴史、利用方法についてご紹介しましょう。
銭湯とは?日本での成り立ちをご紹介
日本の入浴は「浴槽にじっくりとつかる」ことが有名ですが、現代でも使われている銭湯のスタイルが確立したのは江戸時代に遡ります。
「入湯料を支払って公衆浴場に入る」形は鎌倉時代頃にはあったものの、その当時はサウナに近い「蒸し風呂」のような形が主流でした。
江戸時代初期に膝下までを足湯のようにお湯に入れ、上半身は蒸し風呂の手法を取る「戸棚風呂」を経由して、今の「大きな湯船に浸かる」銭湯の形となりました。
江戸時代は火災による被害が多発したため、それを防ぐために庶民の家では自宅に風呂を持つことを禁止されていました。
その代わりとして、近隣住民が使える「銭湯」が重要な役割を果たしていたのです。
近隣住民が集まる銭湯では、「裸の付き合い」と称して利用者同士が率直な話や情報交換をする場の役割を果たしていました。
確かに家族や友人と銭湯に行くと、いつもより本音が話しやすくなる気がします。きっと日本人の文化として受け継がれているのでしょう。
昭和時代まではアパートに浴室がないのが通例でした。
昭和歌謡で有名なかぐや姫の「神田川」の一説には、以下の歌詞があります。
「二人で行った横町の風呂屋 一緒に出ようと言ったのに いつも私が待たされた 洗い髪が芯まで冷えて 小さな石鹸カタカタ鳴った」
※引用:神田川 南こうせつとかぐや姫 JASRACコード:019-6640-5
現代は各家庭や居室に浴室が備え付けてあるため、銭湯はコミュニティの役割や「少しリラックスしたい時に入りたいお風呂」として利用する傾向があります。
また、昨今日本でブームになっている「昭和レトロ文化」を体験するために銭湯に向かう若者も多いようです。
銭湯といえば「富士山」?

銭湯の浴槽の後ろにある壁の「富士山」の絵は「ペンキ絵」と呼ばれ、大正時代に画家に依頼したものが評判となったものが発祥です。
これが各地で流行して「銭湯といえば富士山のペンキ絵」というイメージにつながりました。
有名なペンキ絵ですが、実は東日本地方特有の文化なのはご存知でしたか?
西日本では浴槽が中央にあるため、ペンキ絵を見るのが非常に難しいです。
がまた、一部の銭湯の女湯では子供が喜ぶために「汽車」や「車」が代わりに描かれることもあります。
また、資金に余裕がありお客さんが多く来る地域にある銭湯では「タイル絵」が採用されています。
タイル絵に使われる絵柄は「宝船」や「七福神」など、日本で縁起が良いとされる絵柄が使われているようです。
登録有形文化財となるパターンも
銭湯の建物は明治時代から大正時代に建てられたものが現存しており、日本の建築様式を垣間見ることができます。
そのため、「登録有形文化財」として登録されることもあります。
登録された建物は銭湯としての機能だけでなく、廃業後にギャラリーや飲食店、雑貨屋として活用する事例も出てきています。
また、「江戸東京たてもの園」では1929年に東京都で建てられた「子宝園」が移築され、当時の建物の作りを見学することが可能です。
歴史の趣を感じられる素敵な建物ですが、入浴はできないのでそちらはご注意を!
銭湯の使い方

銭湯をはじめ、日本の大浴場は清潔で安心だと外国の方々から高い評価を受けています。
その理由は管理人だけでなく、利用者の皆さんが公共の場をきれいに使うという考えを持っているからではないでしょうか。
そこで、清潔感を保てる「銭湯」の使い方を見ていきましょう。
普段の入浴と異なるポイントがたくさんあるので、違いを照らし合わせながら見てくださいね。
入浴の流れ
① 事前準備
備えおきのシャンプーやタオルの貸し出しがある銭湯もありますが、スムーズな入浴のために以下のものを用意しておくと安心です!
- シャンプー、コンディショナー、ボディーソープ
普段自分が使い慣れているものを用意しておきましょう。 - ヘアゴム
髪が長い方は湯船の中に入らないよう、まとめておくために使います。 - タオル (フェイスタオル、バスタオル、身体を洗うタオル)
お風呂から上がる時に身体を拭きます。
身体を拭かないまま上がると水滴で足元が滑る可能性があるため、必ず拭いてから上がりましょう。
また、身体を洗うタオルを分けて用意しておくことをおすすめします。
銭湯上級者の持ち物とは?
過去に筆者が見ていて「便利そうだな」と思ったアイテムはこちらです!
- ビニールカゴ
自分の洗面用品を持ち運ぶのに使います。 - ヘアターバン
髪が湯船の中に入らないだけでなく、洗顔の時に便利そうでした。
タオル地など吸水性の良いものが浴槽内の相性と良いでしょう。 - 濡れたものを入れる袋
使い終わったタオルや汚れたものを入れるのに重宝します。
② 入店、使用料の支払い
靴を脱いで銭湯に入店したら、「番台」と呼ばれるカウンターで利用料金を支払います。
銭湯によってはクレジットカードなどキャッシュレス決済が使えない可能性があるので、現金を用意しておきましょう。
その後、性別に分かれて専用の浴室に入ります。
男性は「男湯」女性は「女湯」と書いてあるのれんをくぐって入りましょう。

子供はどちらに入るべき?
よく小さい男の子が女湯、小さい女の子が男湯など、保護者の付き添いで異性の大浴場に入る事例が見かけられます。
小さいお子さんがいる家庭では「どちらの大浴場で入浴させるべきか」と迷う方もいらっしゃるでしょう。
2020年に実施された調査では、「7歳程度」が混浴の上限となっているようです。
そのため、目安として小学生になったお子さんは自分の性別である大浴場に入るのが望ましいでしょう。
引用:厚生労働省「公衆浴場における衛生管理理要領等の改正について〔公衆浴場法〕」(生食発1210第1号)(令和2年12月10日改正)
③ 脱衣所で荷物の整理
のれんをくぐると、「脱衣所」と呼ばれる部屋に入ります。入浴前に荷物の整理をしておきましょう。
・貴重品 (お財布、スマートフォンなど)
鍵付きのロッカーに預けます。
・服、バスタオル、化粧品
脱衣所にあるカゴまたはロッカーの中に入れます。
全て入れ終わったらバスタオルで覆って服などの中身が見えないように隠しましょう。
他の人が使えるよう、カゴは1人1つです。
・フェイスタオル、入浴用品 (シャンプー、石鹸など)
大浴場の中に持って入ります。
また、お手洗いも大浴場に入る前に済ませておきます。
④ 入浴前に身体を洗う
大浴場に入ったら大きな湯船に入りたくなりますが、一旦ストップ。
他の人も湯船に入るので、まず先に身体を洗いましょう。
泡や汚れ、髪の毛が身体につかないようしっかりと流し、一度フェイスタオルで身体を拭きます。
シャワーは後ろを通る人にかからないように、座って静かに使うのが鉄則です。
髪が長い人はこの時点でまとめておきましょう。
⑤ いざ、湯船へ!
身体を清潔にしたらいよいよお待ちかねの湯船に入ります。ほどよいお湯の温かさでリラックスできること確実です。
お湯を汚さないよう、タオルは湯船の中に入れないように注意しましょう。
時折常連の方から話しかけられることもありますが、地元の人と親睦を深めるチャンスです。
日本語を話すのが難しくても、笑顔やジェスチャーで通じる気持ちもあるので、可能な範囲で交流に挑戦することをおすすめします。
きっと話の中でおすすめのスポットや文化を知ることができるかもしれません。
湯船は広いので泳ぎたくなる気持ちも分かりますが、お湯がはねて他のお客様の迷惑になるので控えましょう。
⑥ 身体を拭いて、脱衣所へ戻る
大浴場から脱衣所へ戻る前には必ず持参したフェイスタオルで身体を拭きます。
そのまま脱衣所へ上がると床が濡れて足元がすべります。過去に筆者も濡れた脱衣所の床で危うく転びかけそうになりました。
安全のためにもきちんと身体の水気を拭いてから脱衣所へ行きましょう。
服を着替えて身支度を整えたら、水分補給をします。
日本の銭湯文化ではお風呂上がりに「コーヒー牛乳」や「フルーツ牛乳」など、牛乳に甘い味付けをした飲み物が有名です。
グビっと一気に飲むと爽快感が広がるので、ぜひ挑戦してくださいね。
また、筆者のおすすめはお風呂上がりにアイスキャンディーを食べることです。
銭湯で温まった身体にアイスキャンディーのさっぱりとした冷たさが身体に沁みて気持ちが良いですよ。
食べ物や飲み物をこぼして汚す可能性があるため、必ず銭湯で決められた場所にて飲食をしましょう。
これからの季節は銭湯で心も身体も温まろう

銭湯は長い歴史の中で、入浴だけでなく人々のコミュニティの場として活用されてきました。
今でも銭湯に行くと常連客や管理人の間で笑顔や会話の場が広がっており、私もたまに行くとその様子に心が温まります。私もこの記事を書いている最中に、銭湯に行きたくなってきました。
皆さんも心と身体を温めて癒されたい時は、銭湯に顔を出してくれると嬉しいです。











